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『おいらん淵』(Vol.8)
私の前にいたスタッフ全員が、同時に一歩後退した。
号令がかかったみたいにそろっていた。
彼らの目は、恐ろしさに凍り付いている。
私が飛びかかると思ったのかもしれない。
「あなたは誰ですか」口も聞きたくない彼女は質問を無視する。
私の手は、彼女の怒りで、強くグーで握られ震えている。
長い押し問答の中で、彼女が怒鳴るように口にした言葉は、男へのうらみつらみ。
現代よりも女性が生きずらい時代。
男に利用され、病気になり、捨てられ、死んでいった。
女達の生きざまを彼女が代弁したのだろう。
死んで、ようやく、心おだやかに過ごせる場所をここに見つけたのだ。
彼女は、私が恥ずかしくなるような言葉で自分の思いを告げた。
思いのたけを爆発させると彼女は泣き崩れた。
張り詰めていたものがなくなり、気持ちが楽になったのかもしれない。
時代と境遇に翻弄され、生きていくために必死だった女性たち。
恨みの矛先のやり場がなく、自分達の世界を作ることで、自分たちを守ってきた。
私達は、色々なことを考えさせられながら、彼女達の住処を後にした。

                                      (つづく)
by saito_kei | 2007-06-02 01:04 | [身近にある、ちょっと怖い話。]
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